【予想】今後、AIイラストが法規制される事はないだろう。

最近、AIイラストについての議論が盛んだ。
有名な絵師・イラストレーターだけでも、推進派、容認派、否定派etc...と様々な立場に分かれ、混沌を極めている。

さて、AIイラストの何が問題なのだろうか。

まず考えられる(=もっとも否定派が主張する)のは、"学習権"の問題だ。イラスト作成AIが、著者の許可なくイラスト投稿サイトからデータを収集しているという点だ。
イラストレーターは人間に見せるためにイラストを無料公開しているのであって、AIに学習させるために無料公開していないという。
これは一理あると思う。イラスト作成AIは投稿サイトより後にできたものであり、公開時に同意した利用規則に"AIの学習に利用します"と記載されてはいなかっただろう。
しかし、AIと投稿サイトの運営が異なる以上、イラスト投稿サイトに文句をつけるのは筋違いであると思う。少なくともAIに文句をいうべきだ。そして現に、クレームはつけられている。
ただ、この問題の本質は、AI技術そのものではなく、運営の姿勢だ。
イラストAIが一般的に受け入れられるまでの間、少なくともイラストAIの学習に使用するデータは、そのようなコンセンサスの取れたものに限定すべきだろう。
個人的な意見としては、全体公開されている以上、自由に学習してかまわないと思うが、それを良しとしない人間は一定数いるし、配慮するのが賢明だろう。

次に、イラストレーターの権益の問題だ。
これは食糧問題に似ていると思う。格安の穀物が輸入される事で、国内の農家が職を失うのだ。国内産業が破壊されるのはマイナスであるため、国は関税をかけて保護する。
知識のない人間が大量のAIイラストを生成する事で、画風を確立した上位数パーセントの絵師を除き、職を失う可能性はある。というか現に価格崩壊は始まっているらしい。
数年後には、音楽や小説や動画にも同じ流れが来るだろう。アマチュアやニアプロは商業から駆逐される運命にあるのだろうか。また、これを市場原理として受け入れるべきなのだろうか。
これについては賛否が分かれるだろうが、私はある程度は受け入れなくてはならないと思う。あなたがどう考えるかに関わらずAIは進化を続けるし、インターネットがある以上、国内法でAIを規制する事もできない。創作物の1つ1つがハンドメイドである時代は間違いなく終わる。職を失う人間も現れるだろう。
法律(というか国家)が考えるべき事は、この失業者たちをどのようにケアするかであって、AIを規制する事ではない。AIがある未来に、どのようにソフトランディングするかである。
今までさんざん高い税金を払っている以上、路頭に迷う事はないと信じたい。

さて、AIを法規制する事が難しいといったが、それはなぜか。
これについては、イラストがデータである以上、輸送費がゼロだからである。
日本国内だけでAI技術を禁止したとしても、禁止していない国から無数のイラストが流入するのだ。国内イラストがほとんど海外で生成されたAI… という状況になりうる。

またAI生成物に著作権を持たせないという考えは一定の支持を得ているようだが、これは私は賛成できない。どこからがAIで、どこからが人間であるかの線引きが非常に困難だからだ。
例えば9割をAIで生成し、残り1割を人が手掛けたものに著作権を認めないとなると、結果は全面禁止とほとんど差異がないだろう。

もちろん他人の著作物を真似たものに著作権を認めるべきではないが、これはAIに限った話ではない。トレスを著作物として発表すれば著作権の侵害に当たるし、それに関しては現行法がカバーしてる範囲である。

これらの理由から、AIに限った法規制というのは非常に困難であるという事はわかってもらえるだろうし、ほとんどの試みは愚かな結果に終わると思う。立法府もその程度はわかっている筈なので、AIが規制される事はないだろうと私は考えている。