私はクトゥルフ神話trpg(以下CoC)を,というかあらゆるtrpgシステムを,製作者の意図にそって遊びたいと考えています.
というのも,それが最も合理的で,コンセンサスが取れ,楽しいからです.
極端な話,CoCの戦闘は面白くなく,ソードワールド(以下SW)の探索は面白くないので,CoCで戦闘をシナリオの中心にするべきではないし,SWで探索をメインに添えるべきではないと考えています.
CoCのクライマックスは今までの調査の成果をぶつける場なので,まじめに正面から戦闘するのは馬鹿らしく,別にダイナマイトで爆破しようが問題ないと思います.
対してSWは戦闘の為に3時間かけてキャラを組んできてるので,それをダイナマイト(がラクシアにあるかは知りませんが)で吹き飛ばすのはあまりにも面白くありません.
同様に,大喜利をしたいならキルデスビジネスやフィアスコ,キャラクターにフォーカスを当てたいならステラナイツでやるべきだと考えています.
前置きここまで.
私は昨日,インセインをプレイしました.
かなり有名なシステムですが,今までプレイする機会はありませんでした.
私はCoCの秘匿ハンドアウトが「システムにそぐわない」と忌避しているばかりでなく,そもそも秘匿ハンドアウトシナリオ自体を「自分には合わない,つまらないもの」だと考えていていました.
そして,それらをプレイするためのシステムと呼ばれていたインセインも,きっと合わないだろうと思っていたからです.
ただ,プレイして理解しました.
これは「現在,一般にプレイされるCoCの最適化」がなされたシステムだと.
私はほとんどの場合,CoCでは公式シナリオをプレイします.情報を集め,プレイヤー資料を読み解き,黒幕を追い詰めるという,オーソドックスなものです.
しかし,現在広くプレイされているCoCのシナリオは,そうではありません.
探索者同士やNPCとの会話,いわゆるロールプレイ(正しくはキャラプレイ)にフォーカスを当てており,情報はほとんど自動的に集まり,会話してるだけでクライマックスへと突入します.
こういったシナリオは,探索にほとんど脳のリソースを割く必要がないため,キャラクタープレイをする場,ようするに(極めて性格が悪い言い方をすると)なりきり掲示板としての役割を果たします.
私はキャラクターの再現に楽しみをあまり見いだせないため,このようなシナリオをプレイすると,ガンガン探索を進め,想定時間の1/3程度でシナリオを終えてしまうのですが… やはり,「情報に深みのない,うすっぺらく,面白くないシナリオ」という感想になってしまいます.
こういったシナリオをCoCでプレイする事に,何かしらの違和感を覚えていたのですが… これ,インセインでやればよかったんですね.
インセインの発売は2013年.
ちょうど「ゆっくり妖夢と本当はこわいクトゥルフ神話trpg」が流行したころです.
冒険企画局はこの頃から既に「CoCの遊び方の変化」に気づいていたという事です.
インセインでやれる事は極めて限られています.
NPCデータも,探索箇所も,秘匿情報もすべて「ハンドアウト」という名前でオブジェクト化されており,プレイヤーは盤面に並んだこれらを調べるという行動しかとれません.
その行動を繰り返していると,やがてはクライマックスにたどり着くのです.
プレイヤーが探索で考える事はほとんど皆無です.
あれ?見たことありますね,これ.
そう,システムの設計が,流行りのCoCのシナリオそのものなのです.
こうなるとプレイヤーは,出てくる情報にリアクションを取ることしかできません.
しかし,ここにも工夫があります.ハンドアウトを調べたプレイヤーにしか,情報が開示されたいのです.
一人先に情報を覗き,「おぉ~~~~」とリアクションを取る.
そして,その情報を元にキャラクターをプレイする.
この時点で,私は今までさんざん言われていた「キャラプレイしない人はインセイン向いてないよ」という言葉の意図を完全に理解しました.
僕から言わせれば,CoCで調べた情報を他の探索者に渡さないプレイヤーは,ただの害悪にしかすぎません.
しかし,自分だけが情報を知っているという優越感に浸りたいという層は一定数いるようです.
これを,システム面で認めるというのは,実に時代に即したデザインだと思います.
ちなみにですが,このCoCで秘匿ハンドアウトを遊ぶプレイヤーに「インセインでやれ」というと,インセインプレイヤーから「CoCすらルール通りに遊べない奴が,インセインをルール通りに遊べる訳ないだろ.インセインは隔離病棟じゃねぇ.」と言われるそうです.
やっぱり,trpgシステムはシステム想定通りに遊ぶのが一番だと,再確認するなどしたのでした.